BINAURAL BEATS / 日本語で読む研究
22研究が描く、音の可能性。
「中程度の効果」は、どのくらい? 研究をまとめる方法と結果の読み方を、具体例で理解するメタ分析の解説です。
22研究を集めたのは、「聴く条件」まで見たいから。
「この音は集中によい」と聞いても、どんな音を、いつ、何分聴いたのかで、話は変わります。暗記をする人と、手術前に緊張している人では、期待する変化も違います。研究をひとつずつ読むだけでは、全体の傾向がつかみにくいのです。
Garcia-Argibayらは、バイノーラルビートと記憶・注意・不安・鎮痛の関係を、複数の実験からまとめて検討しました。2017年10月までの文献を検索し、条件に合う22研究を採用。結果を共通の尺度に換算した35の効果量を分析しています。
この論文の問いは、音が関わる変化の大きさと、その違いを生む聴き方の条件です。
メタ分析は、研究の「多数決」ではありません。
メタ分析は、複数の研究で観察された違いを、統計的にまとめる方法です。「良かった研究が何本、そうでない研究が何本」と票を数えるだけではありません。研究ごとの結果の大きさと、その数値がどのくらい安定しているかを扱います。
たとえば、ある研究では覚えられた単語の数、別の研究では不安の質問票の点数を測ります。10語と10点は同じ意味ではないので、そのまま足したり平均したりできません。そこで「効果量」という共通のものさしに置き換えます。
22研究から35の効果量が得られたのは、ひとつの研究が複数の周波数や指標を扱うことがあるためです。「35個の独立した追試にすべて成功した」という数え方ではありません。著者らは、研究ごとに条件が異なることを織り込む統計モデルを用いました。
何をもって「変化した」と判断した?
| 領域 | 一般的に注目すること |
|---|---|
| 記憶 | 情報を保ち、思い出す課題の成績 |
| 注意 | 必要な情報を選び、反応する課題の成績 |
| 不安 | 緊張や不安を尋ねる尺度などの変化 |
| 鎮痛 | 医療場面などで評価する鎮痛に関わる指標 |
「認知」は、覚える、見分ける、注意を向けるといった情報処理の総称です。この言葉を「知能が全体的に上がる」と読み替えず、何をする課題でどんな数字が動いたのかを見ると、研究の内容が具体的になります。
g = 0.45 は、日常の言葉ではどういう意味?
統合した結果はg = 0.45。著者らは、全体として統計的に有意な中程度の効果を報告しています。これは、研究で測った指標に、まとめて見ても検出できる違いがあったという結果です。
効果量は、元の点数を、そのデータのばらつきに照らして表した数値です。仮に、点数のばらつきが10点程度の架空のテストで、平均に4.5点の差があれば、単純化すると0.45程度の規模になります。これは数値の感覚をつかむための例で、この論文の実測値ではありません。
したがって0.45は「45%の人に効く」「能力が45%伸びる」という割合ではありません。また「統計的に有意」は、差がないという仮定のもとでは説明しにくい結果だった、という統計上の判断です。変化の大きさと、偶然のばらつきだけで説明できるかは、別々の観点として読みます。
音そのものだけでなく、いつ聴くかにも注目。
著者らは、課題中だけ聴く場合に比べ、課題の前、または前から最中にかけて聴く場合に、より大きい効果が見られる傾向を報告しました。聴く時間と効果量にも関連があり、背景に白色ノイズやピンクノイズを重ねることは必須ではないとしています。
ここは、研究同士の条件を照らし合わせた分析として読むのがポイントです。たとえば読書前の音の時間を考えるヒントにはなりますが、「何分延ばせば、自分の成績が何点上がる」という個人用の計算式ではありません。研究ごとに参加者や課題も違うためです。
日常に引き寄せるなら、周波数だけを見て選ぶのではなく、何をする時間なのか、いつ聴き始めるのか、心地よく続けられるかを一緒に考える、という視点になります。これは研究を踏まえた編集部の提案です。
この論文から持ち帰れること。
この研究の価値は、音と認知・気分の関係を、複数の実験をまとめて検討したことにあります。全体で好ましい方向の結果を示しながら、聴く条件を詳しく見ていく必要性も示しています。
Binawaveでは、自分の時間に合わせて音を選ぶきっかけとして紹介しています。ここで扱った実験はBinawave自体の効果試験ではありません。研究の数字を、そのままアプリを使う一人ひとりの成果として約束するものではなく、音の可能性を知る手がかりとして読んでください。
具体的な実験を読む:29人は何をした? →参考文献・確認した範囲
Garcia-Argibay, M., Santed, M. A., & Reales, J. M.(2019). Efficacy of binaural auditory beats in cognition, anxiety, and pain perception: a meta-analysis. Psychological Research, 83, 357–372.
原論文の方法・結果・考察を参照した編集部の解説です。逐語訳ではありません。統計の架空例は理解のための補足です。
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